ETFのリターンではなくリスクのお話し
株式投資では、キャピタル・ゲインやインカム・ゲインをを得るためにリスクをとります。投資するお金で得られた利益の利回りが、投資先を決定する指標となります。
ですが、今回はリターンの方ではなく、そのリターンを得るためにどれくらいのリスクをとるのか ということを比較するための指標を見ていこうと思います。
なお、今回のお話しの主体はETFに対しての話となります。個別株でも一部の指標は利用可能です。
リスクの定義
リスクとは、危機というより、想定したよりもずれてしまう度合いです。
難しい言葉でいうと「標準偏差」
もう少し分かりやすく言い換えると「平均からのばらつき度合い」になります。平均からプラス、マイナス標準偏差の範囲内に、およそ70%程度の値が含まれます。
数学嫌いな人、統計なんて大嫌いな人からすると、おそらく上の説明はまったく入ってきませんよね・・
ですから、具体例で説明します。
ダーツ大会にアマチュア、セミプロ、プロの3人が参加しました。
10回投げたときの点数(真ん中を10点、外にいくほど点数が低くなるというルールだった場合)を競いました。
それぞれの選手が平均からどれくらいブレがあったか見ていきましょう。
それぞれの選手の結果と、その平均、標準偏差の表とグラフをご覧ください。(平均を中心に7割程度の回数が含まれる範囲がピンクの領域で、これが標準偏差(ブレ)の範囲です。標準偏差が大きいほど、下手くそってことです。)
セミプロは、アマチュアよりはいけていますが、少しだけ取りこぼしがあります。
こちらのプロはパーフェクトです。まったくブレがありません。
標準偏差が低いということは、ブレが少ないということです。
そして、上触れも下振れも少ない狙いどおりの状態であれば、リスク(標準偏差)が小さいということになります。
特に投資の場合、上振れは大いに結構ですが、下振れになってしまうと、損失を出してしまう可能性が高くなってしまいます。
ですから、リスク(標準偏差)がどれくらいであるか、投資先を決定する際の一つの要因としてチェックすべきです。
シャープ・レシオ
シャープ・レシオは、投資対象に対して、リターン(収益)を得るにあたり、どれくらいのリスクを取ったか、リターンとリスクの比率をとったものです。
計算式は
シャープレシオ= { 投資先の利回り(%) - 無リスク資産の利回り(%) } / 投資先のリスク(標準偏差)
無リスク資産の利回りとは、例えば定期預金や国債のような元本保証されている投資先の中で一番利回りの高いものです。この場合、米国債10年利回り(2.37%)とかになります。
意味合いとしては、リスク無しで受け取れる以上のリターンを得るために、どれくらのリスクを取ったのか(逆にいえば、リスクをとって、どれだけの余剰リターンが得られたのか)を数値化したものです。
この計算式により、リスクに対してのリターンの効率性、優等生振りが分かります。
分子がリターン、分母がリスクですのでローリスク、ハイリターンであればあるほど、このシャープ・レシオの値が大きくなり、効率的にリターンを得ることができたと言えます。
目安としては
1未満であれば、投資先としては十分に検討すべき(ただし、他に投資先がなければ止む無しの)レベル
1以上 2未満であれば 投資する妥当性があるレベル
2以上 3未満であれば かなり投資する妥当性があるレベル
3以上であれば 投資、いつやるの? 今でしょ (古) レベル
でしょうか。絶対値での評価はよく分かりません。
同じカテゴリーのETFなどでリターンが同じで甲乙つけがたいときに、シャープ・レシオを確認して、より大きい方を選択するようにしましょう。
Morningstarのサイト(下記に出てきます)で簡単にチェックできます。
アルファ、ベータ
ベータ(β)は、市場とどれくらい相関関係があるかを示します。
β=1.0 であれば 市場(S&P500インデックス)と同じ挙動をします。
β<1.0 であれば、市場よりもおとなしいマイルドな動きになります。
β>1.0 であれば、市場よりも上でも下でも大きな変動をします。
値動きがマイルドな方を好む方はベータが1.0より小さいETFや個別株を選択してください。
なおグロースの個別株はベータがかなり大きくなります。特にITセクター、金融セクターは1.4、1.5もしくはそれ以上の銘柄がありますので投資するには注意が必要です。
アルファ(α)は、語弊を恐れずに一言でいってしまうと、そのETFの努力(ポートフォリオや買い付けタイミング等々)で、ベンチマークに対してプラスアルファできた利回り(%)になります。つまり、同じベンチマークを利用しているETFであれば、アルファが大きい方が、より利益をもたらしてくれる投資先であることを示します。
SPYのようなS&P500をベンチマークとするETFのアルファ、ベータを確認すると、いずれもベータが1.0、アルファが-0.08(経費率の分だけマイナス)になっていることが分かります。
アルファ、ベータともに、投資対象を比較するときの相対的な指標として利用するのがよいでしょう。
アルファ、ベータ以下のサイトにある動画を見ると、よりイメージができる思います。
特にベータは分かりやすいです。ですが、アルファは分かりづらいかも・・