ドルコスト平均法は有効なのか
ドルコスト平均法とは
投資の基本は、安いときに買って高くなったら売るのが基本です。
ですが、投資初心者にとっては、市場での日々変動する価格を見て、安いのか高いのかをしっかりと分析することはなかなか難しいものです。
安いと思って投資したところで、予期しない事由で価格が急落することもあります。
一方、もう少し値下がりしたら買おうと思って待っていたら、急騰してしまい買いそびれてしまうことだってあります。
ベテランの投資家やプロの市場関係者ですら見誤ることがある投資の世界では、100%確実なことは何一つとしてありません。
そこで、投資初心者にオススメとして、よく出てくるのが「ドルコスト平均法」と呼ばれる投資手法です。
これは、積立投資(一定間隔、一定金額の規則で投資)の根底にあるリスク分散の手段です。定期的に(例えば毎月)投資することで、投資先の取得単価を平準化しようとするものです。
市場の株式やETFは、日々値上がりしたり値下がりしています。
購入タイミングをずらして何度かに分けることで、投資全額を高値で掴んでしまうリスクを低減します。そして安値になったらたくさん買い付けして数量を増やすことができます。
ここまでの説明では、初心者にはイメージが掴めないので、より具体的なケースごとに見ていきます。
ケース1:毎月一定金額を積み立てた場合(市場価格はランダム)
ケース1では、毎月100の積立投資をしています。
投資先の株価(市場価格)は投資してしばらくは順調に価格をあげています。
しかし何かのきっかけで急落し、最高値から半分まで落ちてしまったとします。
このとき、一時的には投資元金の累計に対して、評価額がマイナス(つまり含み損)の状態が発生します。
ここでめげずに、積立を継続していくと、株価が復調することで、評価額がプラスに反転しました。
価格が高いときは控えめに購入し、価格が安いときは多めに購入する、ということを機械的にすることで取得コストを平準化しているのです。
ケース2:毎月一定金額を積み立てた場合(市場価格はランダム)+暴落時に追加投資した場合
ケース1を少し戦略的にした手法が、ケース2です。
こちらは、常に暴落時に備えて余剰資金を準備しておいたと仮定します。
そして、いざ暴落したときには、事前に決めたルール(注1)などに従い、毎月の一定の投資額に加えて、さらに追加投資しています。
そうすることで、ケース1と株価の動きがまったく同じであっても、より大きなリターンを得ることが可能です。
注1:ここでいうルールとは、自分自身で暴落時の基準とそのときの行動を決めておくということです。
例)
- 直前の最高値から10%下落 → 余剰資金の10%を追加投資
- 直前の最高値から20%下落 → 余剰資金の20%を追加投資(累計30%投資)
- 直前の最高値から40%下落 → 余剰資金の30%を追加投資(累計60%投資)
ケース3:初回に全額投資した場合(市場価格はランダム)
ケース3では、初回に投資可能額全額を一気に投資してみたケースです。
確かに前半は株価が順調に上昇、ケース1、2よりも含み益が多く、この投資手法が一見優れているように見えます。しかし、いざ暴落しだすと、途端に含み益は吹き飛び、それどころかケース1、2よりも含み損が大きくなっていることがわかります。
幸い、このケースでは株価が復調することでなんとかプラスのリターンを維持しています。
ですが、最終リターンがケース1、2よりも明らかに少なくなっています。これは、取得コストを十分に平準化できなかった(下げることができなかった)ことによるものです。
ここまで、「ドルコスト平均法」のメリットを説明しました。
では、デメリットはないのか?という疑問が出てきます。
世の中に万能な投資手段はありませんから、「ドルコスト平均法」にもデメリットがあります。
それは、市場のトレンドがずっと同じ場合です。
今のようなずっと強気相場(右肩上がり)が数年以上続くような相場であった場合を考えます。
ケース4:市場価格がずっと右肩上がりの場合 かつ 毎月一定金額を積み立てた場合
明らかに価格が右肩上がりの相場の場合(もちろんこれは、後になってからそうだったと結論づけられるものですが)は、積立投資においてみすみす投資機会を逃していると言えます。
しかし、ここで重要なことは「損をしないこと」です。そして、この投資手法で、積立投資したとして、損をせずにしっかりとリターンを得ています。
ケース5:市場価格がずっと右肩上がりの場合 かつ 初回に全額投資した場合
ケース4と同じ右肩上がりの良好な市場トレンドだった場合で、もし投資期間の初回に全額投資した場合にどうなるか、参考として載せておきます。
投資機会を的確に捉え、期間内の値上がりをすべて享受できました。これは投資妙味に尽きます。
ですが、忘れてはいけないのは、ケース3のような暴落がいつ何をきっかけに起きるかは誰にも予測できません。ですから、リスクを取りすぎるのは禁物です。
ケース5の応用として、ケース2と同じように組み合わせを検討するのも有効です。
つまり、当面は上昇トレンドが続くとある程度確信が持てるのであれば、初回に例えば50%を投資しておき、残りを積立投資で時間分散するような戦略も考えられます。
こうすることで、機会損失の割合を減らしつつ、かつリスク分散しながら万一の暴落時の取得コスト平準化にも対応可能です。
それから、「『ドルコスト平均法』なんて、投資初心者に売買回数を増やして手数料を取りたい証券会社やFPの営業トークでしかない。」というコメントもよく見かけます。
確かに、その指摘は正しいのですが、一方で正しくないとも言えます。
昨今、ノーロード(販売手数料0円)の投資信託や、NISA口座では売買手数料無料の証券会社が増えています。そういう好条件の前提(売買コストがない、または低い)ということであれば、購入回数のデメリットはありません。
まとめ。結局どうなのか
- 「ドルコスト平均法」は、投資初心者にとって、リスクを低減しリターンをあげるためのよい手段となり得る。
- 暴落時は、「ドルコスト平均法」に加えて、自分ルールによる追加投資できるようにしておくとよい。
- そのための追加投資のための余剰資金をいつも準備しておくを忘れずに。
- 投資先の売買手数料が無料でない場合は、買い付け回数を減らすことも検討。
- ベテラン投資家、プロの投資家は、「ドルコスト平均法」を使う場面、期間、割合をうまくコントロールしている(はず)
おわりに
投資を長い期間していると、いつかは必ず大きな嵐が市場を襲うことを覚悟しなければいけません。
そのときに、初回に全額投資をしていたケースと、毎月コツコツと積立していたケースとでは、心理的な負担が全く違ってきます。
リーマンショックのような大暴落を経験した方ならきっとわかると思いますが、いざというとき、いかに平常心でいられるかで全くことなる未来が訪れることでしょう。
イソップ寓話「うさぎとかめ」のように、のろのろでも着実に結果を積み上げて成功するストーリーに私は心惹かれます。